【ホテル・接客業向け】高評価を得るための電話対応術!予約・問い合わせに強くなる方法

不動産業界において、お客様との最初の接点となることが多い「電話対応」。この電話対応の質が、会社の評判や顧客満足度、ひいては成約率にまで大きな影響を与えることをご存知でしょうか。内見の予約電話一本、物件に関するちょっとした問い合わせ、時には予期せぬクレームの電話まで、お客様は電話口での対応を通じて、その不動産会社が信頼できるかどうかを判断しています。対面での接客と同じように、いや、声だけのコミュニケーションだからこそ、より一層丁寧で的確な対応が求められるのです。

この記事では、不動産業界で働く皆様が、お客様から「この会社にお願いしたい」と思っていただけるような、ワンランク上の電話対応マナーを身につけるための具体的な方法を解説します。基本的なマナーから、内見予約をスムーズに進めるテクニック、難しいクレームを信頼回復のチャンスに変える上級対応術まで、明日からすぐに実践できるノウハウが満載です。電話対応スキルを磨き、お客様に選ばれる不動産会社を目指しましょう。

なぜ電話対応が不動産業界の評価を左右するのか

第一印象を決める声のトーンと話し方

電話では、相手の表情や身振り手振りが見えません。そのため、伝わる情報は「声」がすべてです。明るく、はっきりとした声のトーン、丁寧で落ち着いた話し方は、お客様に安心感と信頼感を与えます。逆に、不機嫌そうな声、早口で聞き取りにくい話し方、あるいは事務的で冷たい印象を与える話し方は、お客様を不安にさせ、「この会社に任せて大丈夫だろうか」という疑念を抱かせてしまう可能性があります。

たとえば、あるお客様が賃貸物件を探しており、気になる物件について問い合わせの電話を入れたとします。電話に出た担当者の声が小さく、面倒くさそうな口調だったらどうでしょうか。「〇〇アパートの件ですが…」「あー、はいはい、担当に代わりますんで」といった具合です。これでは、お客様は問い合わせる前から気分を害してしまい、その後の内見や契約に進む意欲を失ってしまうかもしれません。たとえ物件自体は魅力的だったとしても、「あんな対応の会社とは関わりたくない」と思われてしまうのです。

反対に、「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇不動産の△△が承ります。本日はどのようなご用件でしょうか」と、明るくハキハキとした第一声であれば、お客様は「ちゃんと話を聞いてくれそうだ」と感じ、安心して用件を話し始めることができます。声のトーンは意識的にコントロールできるものです。少し高めのトーンを意識し、口角を上げて話すだけでも、声の印象は格段に明るくなります。ゆっくりと、相手に聞き取りやすいスピードで話すことも重要です。不動産取引は大きなお金が動くことも多く、お客様は慎重になっています。だからこそ、最初の電話対応で安心感を与えることが、信頼関係構築の第一歩となるのです。

さらに言うと、不動産会社の電話は、物件を探しているお客様だけでなく、すでに入居されている方、物件のオーナー様、関連業者など、様々な立場の方からかかってきます。どのような相手に対しても、常にプロフェッショナルとして、誠実で丁寧な対応を心がけることが、会社全体の印象を高めることに繋がります。声の印象一つで、ビジネスチャンスが生まれたり、逆に失われたりすることを、常に意識しておく必要があるでしょう。

顧客満足度向上に繋がるスムーズな案内

お客様が電話をかけてくるのは、何らかの目的があるからです。物件情報を詳しく知りたい、内見の予約を取りたい、契約内容について確認したい、あるいは困っていることを相談したいなど、その目的は多岐にわたります。電話対応の役割は、お客様の目的を正確に理解し、迅速かつ的確に必要な情報を提供したり、適切な担当者へスムーズに取り次いだりすることです。この案内のスムーズさが、顧客満足度に直結します。

たとえば、お客様が特定の物件の空き状況について問い合わせてきた場面を想像してみましょう。担当者がすぐにシステムで確認し、「お問い合わせの〇〇マンションですが、現在△階の角部屋がご紹介可能です。家賃は〇〇円、管理費は〇〇円でございます。こちらの物件は日当たりが良く、駅からも徒歩5分と大変人気がございますが、詳細についてご説明いたしましょうか」とスムーズに答えられれば、お客様は「この会社はしっかりしているな」と感じ、満足度が高まります。

しかし、「えーっと、少々お待ちください…(長い保留)…お待たせいたしました。確認したのですが、ちょっと今情報が手元になくて…担当者が不在ですので、折り返しご連絡いたします」といった対応ではどうでしょうか。お客様は待たされた挙句、すぐに欲しい情報が得られず、不満を感じるでしょう。特に、複数の不動産会社に同時に問い合わせているお客様の場合、対応の遅い会社はすぐに候補から外されてしまう可能性があります。

スムーズな案内を実現するためには、日頃からの準備が欠かせません。よくある質問とその回答をまとめたFAQリストの作成、物件情報のデータベースへの迅速なアクセス方法の習熟、担当者不在時の適切な対応フローの確立などが有効です。また、お客様の質問の意図を正確に汲み取るヒアリング能力も重要となります。「〇〇について知りたい」というお客様の言葉の裏にある、本当のニーズや懸念点を理解しようと努める姿勢が、より的確で満足度の高い案内に繋がるのです。保留にする場合も、理由と時間の目安を伝え、できるだけお待たせしない配慮が求められます。スムーズな案内は、お客様の時間を大切にするという姿勢の表れであり、それが顧客満足度を高める上で不可欠な要素と言えるでしょう。

リピーター獲得と口コミ評価への影響

不動産取引は、一度きりで終わらないケースも少なくありません。賃貸であれば更新や住み替え、売買であれば買い替えや投資用物件の購入など、お客様のライフステージの変化に伴い、再び不動産会社を必要とする場面が訪れます。その際に、「またあの会社にお願いしたい」と思っていただけるかどうかは、過去の対応、特に記憶に残りやすい電話対応の質に大きく左右されます。

たとえば、以前アパートを借りた際に、入居中の些細な問い合わせにも親身に対応してくれた、更新手続きの電話連絡がいつも丁寧で分かりやすかった、といった経験があると、お客様は「次も〇〇不動産に相談してみよう」と考える可能性が高まります。これは、まさに電話対応がリピーター獲得に貢献した事例です。一度良い関係を築けたお客様は、単なるリピーターに留まらず、優良な顧客となってくれる可能性も秘めています。

さらに、現代において無視できないのが、インターネット上の口コミ評価です。良い電話対応は、直接的な感謝の言葉だけでなく、口コミサイトやSNSでのポジティブな評価に繋がることがあります。「電話対応がとても丁寧で安心できた」「問い合わせに迅速に対応してもらえた」といった口コミは、新規顧客獲得において非常に強力な武器となります。多くのお客様は、不動産会社を選ぶ際に、インターネット上の評判を参考にします。そのため、良い口コミは、広告費をかけずに見込み客を引き寄せる効果があるのです。

逆に、電話対応が悪かった経験は、ネガティブな口コミとして広まりやすい傾向があります。「電話に出た人の態度が悪かった」「何度も電話をたらい回しにされた」「言ったことが担当者に伝わっていなかった」などの悪い評判は、会社のイメージを著しく損ない、新規顧客獲得の機会損失に繋がります。一度付いてしまった悪い評判を払拭するのは容易ではありません。

このように、電話一本一本の対応が、お客様との長期的な関係構築、リピーター獲得、そして会社の評判形成にまで影響を及ぼします。日々の電話対応を丁寧に行うことは、未来への投資でもあるのです。だからこそ、全社的に電話対応の重要性を認識し、スキル向上に取り組むことが求められます。

さて、電話対応の重要性をご理解いただけたところで、次に具体的なマナーについて見ていきましょう。

押さえておきたい 電話対応の基本マナー

迅速かつ丁寧な第一声の重要性

電話が鳴ったら、できるだけ早く、理想的には3コール以内に出ることが基本です。長く待たせてしまうと、お客様は「忙しいのかな」「後回しにされているのかな」と不安に感じてしまいます。もし3コール以上鳴ってから出る場合は、「大変お待たせいたしました」と一言添える心遣いが大切です。

そして、電話に出た際の第一声。これは会社の顔として、非常に重要な役割を担います。「はい、〇〇不動産です」だけでは、少し素っ気ない印象を与えてしまうかもしれません。「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇不動産の△△が承ります」のように、感謝の言葉、会社名、そして自分の名前をはっきりと名乗ることが基本形です。これにより、お客様は誰が電話に出たのかを明確に認識でき、安心感を得られます。

たとえば、急いでいるお客様が内見のキャンセル連絡を入れてきたとします。電話がなかなかつながらず、やっと出たと思ったら「はい」とだけ言われたら、お客様はさらに焦りを感じるかもしれません。しかし、「大変お待たせいたしました。〇〇不動産の△△でございます」と落ち着いた丁寧な第一声があれば、お客様も少し落ち着いて用件を伝えることができるでしょう。この最初の数秒間の対応が、その後のコミュニケーションの質を左右するのです。

また、声のトーンも第一印象を大きく左右します。前述の通り、少し高めの明るいトーンを意識し、ハキハキと話すことを心がけましょう。たとえ忙しい状況であっても、電話口では落ち着いた、プロフェッショナルな態度を示すことが求められます。ちなみに、電話を受ける際は、メモ帳とペンを必ず手元に用意しておくことも忘れてはいけません。お客様の名前や用件をすぐにメモできるように準備しておくことで、スムーズな対応が可能になります。この迅速かつ丁寧な第一声と、それに伴う準備が、信頼される電話対応のスタートラインとなるのです。

正確な情報伝達のための復唱確認

電話でのコミュニケーションは、聞き間違いや勘違いが起こりやすいものです。特に不動産取引においては、物件名、住所、お客様の名前、連絡先、日時、金額など、正確性が求められる情報が多く含まれます。これらの情報を誤って伝達してしまうと、後々大きなトラブルに発展しかねません。そこで重要になるのが「復唱確認」です。

お客様から伝えられた重要な情報や、こちらからお伝えした内容について、「念のため復唱させていただきます」と断った上で、一つひとつ確認する習慣をつけましょう。たとえば、内見の予約を受ける際には、「それでは、〇月〇日(〇曜日)の午後〇時に、〇〇マンションのエントランスにてお待ち合わせということでよろしいでしょうか。ご連絡先は、〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇の△△様でいらっしゃいますね」というように、日時、場所、お名前、連絡先を復唱します。

もし、お客様が特定の物件名を早口で言った場合、「恐れ入ります、もう一度物件名をお伺いしてもよろしいでしょうか」と聞き返す勇気も必要です。聞き取れなかったり、自信がなかったりする情報を曖昧なまま進めてしまうのが一番危険です。復唱確認は、単なる確認作業ではなく、お客様に対して「あなたの話を正確に理解しようとしています」という誠意を示す行為でもあります。

具体的事例として、ある新人の営業担当者が、お客様からの電話で内見希望日時を承ったものの、復唱確認を怠ったケースがありました。担当者は「金曜日の午後」とメモしましたが、お客様は「来週の金曜日の午後」という意味で伝えていました。結果、担当者は今週の金曜日に現地で待っていましたがお客様は現れず、後日お客様から「なぜ来なかったのか」とクレームの電話が入ってしまいました。もし、「来週の金曜日、〇月〇日の午後ということでよろしいでしょうか」と一言確認していれば、このような行き違いは防げたはずです。数字や曜日、固有名詞などは特に間違いやすいため、必ず復唱確認を行いましょう。この一手間が、ミスを防ぎ、お客様との信頼関係を守ることに繋がります。

状況に応じた適切な言葉遣いと敬語

不動産会社の電話対応では、お客様に対して常に丁寧な言葉遣いを心がけることが基本です。正しい敬語(尊敬語、謙譲語、丁寧語)を使い分けることで、お客様に敬意を示し、プロフェッショナルな印象を与えることができます。しかし、過度に堅苦しい言葉遣いや、間違った敬語は、かえってお客様に距離を感じさせてしまうこともあります。状況や相手との関係性に応じて、適切な言葉遣いを選ぶ柔軟性も必要です。

たとえば、初めて電話をかけてこられたお客様に対しては、「〇〇様でいらっしゃいますね」「承知いたしました」「少々お待ちいただけますでしょうか」といった、基本的な尊敬語や謙譲語、丁寧語をしっかりと使うことが重要です。一方で、すでに関係性が構築されているお客様や、長年お付き合いのあるオーナー様などに対しては、少し親しみやすさを加えた言葉遣いをすることも、良好な関係を維持する上で効果的な場合があります。ただし、親しき仲にも礼儀あり。馴れ馴れしい言葉遣いにならないよう、節度を保つことが肝心です。

不動産業界特有の専門用語を使う際にも注意が必要です。「重要事項説明」「抵当権」「瑕疵担保責任」などの専門用語を、一般のお客様に対してそのまま使ってしまうと、理解されにくい場合があります。お客様の知識レベルに合わせて、できるだけ平易な言葉で説明したり、「これは〇〇という意味なのですが」と補足説明を加えたりする配慮が求められます。専門用語を多用して煙に巻くような印象を与えてしまうと、不信感に繋がりかねません。

また、クレーム対応など、お客様が感情的になっている場面では、特に言葉遣いに慎重になる必要があります。相手の言葉を冷静に受け止め、共感の意を示しつつも、丁寧な言葉遣いを崩さないことが重要です。「お気持ちお察しいたします」「ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません」といったクッション言葉や謝罪の言葉を適切に使うことで、お客様の興奮を鎮め、冷静な話し合いに繋げることができます。逆に、不用意な一言が火に油を注ぐ結果になることもあるため、言葉選びは慎重に行わなければなりません。状況に応じた適切な言葉遣いと敬語の使い分けは、一朝一夕に身につくものではありませんが、日頃から意識し、周囲の先輩や上司の話し方を参考にしながら、少しずつ習得していくことが大切です。これができれば、お客様とのコミュニケーションはより円滑になるでしょう。

基本的なマナーを身につけた上で、次はいよいよ内見予約や契約に繋げるための具体的なテクニックについて解説します。

内見予約や契約に繋げる電話対応テクニック

お客様の要望を正確にヒアリングする方法

お客様から電話があった際、ただ用件を聞くだけでなく、その背景にある要望やニーズを深く理解することが、最適な提案への第一歩です。「〇〇マンションについて聞きたいのですが」という問い合わせに対して、「はい、家賃は〇〇円です」と情報だけを伝えるのではなく、「ありがとうございます。〇〇マンションですね。どのような点に興味をお持ちでしょうか」「現在のお住まい探しで、特に重視されている条件などはございますか」といった質問を投げかけることで、お客様の具体的な状況や希望を引き出すことができます。

ヒアリングの際には、「オープンクエスチョン(自由に回答できる質問)」と「クローズドクエスチョン(Yes/Noや選択肢で答えられる質問)」を効果的に使い分けることがポイントです。たとえば、「どのようなエリアでお探しですか(オープン)」と広く問いかけ、お客様の回答の中から「通勤時間は30分以内が希望です」という具体的な条件が出てきたら、「では、〇〇線沿線で探してみましょうか(クローズド)」と絞り込んでいくイメージです。

ここで重要なのは、単に質問を繰り返すのではなく、お客様の話を注意深く聞き(傾聴)、共感を示すことです。「なるほど、お子様の学区を考慮されているのですね」「通勤の利便性は重要ですよね」といった相槌や共感の言葉を挟むことで、お客様は「自分の状況を理解してくれている」と感じ、より心を開いて話してくれるようになります。

具体的事例を挙げましょう。あるお客様が「ペット可の物件を探している」と電話してきました。担当者はすぐに物件リストを確認するのではなく、「ありがとうございます。ペット可の物件ですね。ちなみに、どのような種類のペットを飼っていらっしゃいますか。また、広さや家賃のご希望はございますか」とヒアリングを始めました。すると、お客様は小型犬を飼っており、散歩ができる公園が近くにあること、日当たりが良い部屋を希望していることなどを話してくれました。この丁寧なヒアリングによって、担当者は単に「ペット可」という条件だけでなく、お客様のライフスタイルに合った物件をいくつかピックアップし、提案することができました。結果、お客様は非常に満足し、スムーズに内見予約に繋がりました。このように、お客様自身も気づいていない潜在的なニーズまで引き出すことができれば、より的確で満足度の高い提案が可能になるのです。

物件確認から内見予約までのスムーズな流れ

お客様の要望をヒアリングし、いくつか候補物件が絞り込めたら、次はその物件の最新情報を確認し、内見予約へとスムーズに繋げる段階です。ここでの対応スピードと的確さが、お客様の熱意を維持し、他社に流れるのを防ぐ上で非常に重要になります。

まず、お客様が興味を示した物件について、空き状況、家賃、敷金・礼金、入居可能日などの基本情報を、社内のデータベースや担当部署に確認し、正確かつ迅速に伝えます。この際、「確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか」と断りを入れることを忘れないようにしましょう。もし確認に時間がかかりそうな場合は、おおよその時間を伝え、お客様の都合が良ければ折り返し連絡するなどの対応をとります。

物件情報をお伝えする際には、単にデータを読み上げるだけでなく、その物件の魅力やアピールポイントを付け加えることが効果的です。「こちらの物件、先日リフォームが完了したばかりで、特に水回りがきれいでおすすめです」とか、「最上階の角部屋ですので、眺望と日当たりが大変良いですよ」といった具体的な情報を加えることで、お客様の期待感を高めることができます。可能であれば、周辺環境の情報(スーパーやコンビニ、駅からの距離、公園の有無など)も併せて伝えるとなお良いでしょう。

そして、お客様が物件に興味を示したら、すかさず内見を提案します。「もしよろしければ、実際に物件をご覧になりませんか。今週末でしたら、比較的ご案内しやすいお時間がございますが、ご都合はいかがでしょうか」というように、具体的な日時をいくつか提示し、お客様に選択してもらう形で提案すると、スムーズに予約に繋がりやすくなります。内見の日時が決まったら、前述の通り、日時、場所、連絡先などを必ず復唱確認し、持ち物や当日の流れなども簡単に伝えておくと、お客様は安心して当日を迎えることができます。

たとえば、問い合わせの電話で話が盛り上がり、お客様も物件に乗り気になっているのに、「内見ですか…担当者が不在でして、また改めて…」といった対応をしてしまうと、せっかく高まったお客様のモチベーションが下がってしまいます。可能な限りその場で内見の調整を行うか、迅速に折り返し連絡をする体制を整えておくことが、機会損失を防ぐために不可欠です。物件確認から内見予約までの一連の流れを、よどみなく、お客様の気持ちに寄り添いながら進めることが、成約への道を切り拓くのです。

プラスアルファの提案で顧客満足度を高めるには

お客様の要望通りの物件を紹介し、内見予約を取り付けるだけでも十分な成果ですが、さらに一歩進んで「プラスアルファの提案」をすることで、顧客満足度を格段に高め、お客様との長期的な信頼関係を築くことができます。これは、単なる物件紹介に留まらず、お客様の期待を超える価値を提供しようとする姿勢の表れです。

プラスアルファの提案とは、具体的にどのようなものでしょうか。一つは、お客様のヒアリング内容から、潜在的なニーズを読み取り、当初の希望条件とは少し異なるが、お客様にとってよりメリットが大きいかもしれない物件を提案することです。たとえば、「駅から少し離れますが、同じ家賃でより広く、設備の充実した新築物件もございます。バス便も利用できますが、いかがでしょうか」といった提案です。もちろん、押し付けにならないよう、「もしご興味があれば」というスタンスで提案することが大切です。

また、物件そのものだけでなく、周辺環境や地域情報に関するプラスアルファの情報提供も喜ばれます。「物件の近くに、地元で評判の美味しいパン屋さんがあるんですよ」とか、「週末には近くの公園でファーマーズマーケットが開かれています」といった情報は、お客様の新しい生活への期待感を膨らませます。特に遠方から引っ越してくるお客様にとっては、こうした地域に密着した情報は非常に価値が高いものです。

さらに、契約や引っ越しに関連する付帯サービスの情報提供も、プラスアルファの提案となり得ます。たとえば、提携している引っ越し業者の割引サービス、インターネット回線の申し込みサポート、火災保険の手続き案内など、お客様の手間を省き、メリットを提供できる情報があれば積極的に伝えましょう。ただし、あくまでもお客様の選択肢を広げるための情報提供であり、特定のサービスを強引に勧めることのないよう注意が必要です。

具体的事例として、ファミリー向けの物件を探しているお客様に対し、希望エリアの物件を紹介した後、「ちなみに、〇〇小学校は地域でも教育熱心と評判で、PTA活動も盛んだと聞いております。また、近くにはお子様向けの大きな公園や図書館もありますよ」と付け加えたところ、「そんな情報まで教えてくれるなんて」と大変喜ばれ、その後の内見、契約まで非常にスムーズに進んだというケースがあります。このように、お客様の立場に立ち、「自分だったらどんな情報が嬉しいか」を考えて行動することが、プラスアルファの価値を生み出し、結果として高い顧客満足度と信頼に繋がるのです。言われたことだけをこなすのではなく、常に一歩先を考えた提案を心がけたいものです。

このようにして内見や契約に繋げるテクニックを駆使する一方で、日常業務では様々な問い合わせに対応する必要もあります。次に、そうした問い合わせへのスムーズな対応術を見ていきましょう。

問い合わせに的確に答える スムーズ対応術

よくある質問へのスマートな回答準備

日々の業務の中で、お客様や関係者から寄せられる質問には、ある程度の傾向があります。「家賃の支払い日はいつですか」「更新手続きはどうすればいいですか」「インターネットを使いたいのですが、どの回線が引けますか」「退去時の流れを教えてください」など、頻繁に受ける質問については、あらかじめ回答を準備しておくことが、スムーズな対応への近道です。

有効なのは、社内で「FAQ(よくある質問とその回答)リスト」を作成し、共有することです。このリストには、質問内容だけでなく、関連する情報(担当部署、参照すべき書類、手続き方法など)も併記しておくと、誰が電話に出ても一定レベルの回答ができるようになります。FAQリストは、一度作ったら終わりではなく、新しい質問が追加されたり、情報が更新されたりするたびに、定期的に見直し、最新の状態に保つことが重要です。

たとえば、「エアコンが故障した」という入居者からの問い合わせがあった場合、FAQリストに「エアコン故障時の対応フロー」が記載されていれば、電話を受けた担当者は慌てることなく、「ご不便をおかけし申し訳ありません。メーカーと型番をご確認の上、再度ご連絡いただけますでしょうか。修理の手配をさせていただきます」といった初期対応をスムーズに行うことができます。もしリストがなければ、担当者に確認したり、過去の事例を探したりするのに時間がかかり、お客様を待たせてしまうことになります。

また、FAQリストは、単に回答を読み上げるためだけでなく、応対品質を標準化するためにも役立ちます。どの担当者が対応しても、同じ質問に対しては同じ質の回答を提供できることが、会社の信頼性を高めます。スマートな回答準備とは、単に情報を整理するだけでなく、それを活用して迅速かつ正確な対応ができる体制を整えることなのです。これにより、お客様は「いつでも的確な答えが返ってくる」という安心感を得ることができます。

不明点や担当外の問い合わせへの対処法

どれだけFAQリストを充実させても、すべての問い合わせに即答できるわけではありません。時には、専門的な知識が必要な質問、イレギュラーなケース、あるいは自分が担当していない業務に関する問い合わせを受けることもあります。このような場合、知ったかぶりをしたり、曖昧な回答をしたりするのは絶対に避けなければなりません。間違った情報は、後で大きなトラブルを引き起こす原因となります。

不明な点や自分の担当外の問い合わせを受けた際の基本は、「正直に分からないことを伝え、確認してから回答する、または適切な担当者に取り次ぐ」ことです。「申し訳ございません、その件につきましては、ただ今正確な情報が分かりかねますので、確認の上、折り返しご連絡させていただいてもよろしいでしょうか」あるいは「その件につきましては、担当部署がございますので、そちらにお繋ぎいたします。少々お待ちいただけますでしょうか」といった対応が適切です。

担当者に取り次ぐ際には、お客様から伺った用件を正確に、かつ簡潔に次の担当者へ伝えることが重要です。お客様に同じ話を何度も繰り返させるのは、大変なストレスを与えてしまいます。「〇〇様から、△△の件でお問い合わせです。□□といったご状況とのことです」のように、事前に情報を整理して引き継ぐことで、スムーズな連携が可能になります。これを「申し送り」と言いますが、社内連携の質がお客様への対応品質に直結するのです。

具体的事例として、物件のオーナー様から、確定申告に関する税務上の質問を受けたケースを考えてみましょう。電話を受けた事務スタッフは、税務の専門家ではありません。ここで下手に回答するのではなく、「申し訳ございません、税務に関する専門的なご質問につきましては、私では的確な回答をいたしかねます。顧問税理士に確認するか、オーナー様ご自身で税務署にご相談いただくのがよろしいかと存じます。弊社で顧問税理士にお繋ぎすることも可能ですが、いかがなさいますか」といった対応が考えられます。責任の所在を明確にし、お客様にとって最善の方法を提示することが大切です。分からないことを正直に認め、適切な対応をとる誠実さが、かえってお客様からの信頼を得ることに繋がるのです。

保留や折り返し連絡をするときの注意点

問い合わせ内容を確認したり、担当者を探したりするために、お客様に電話口で待っていただく「保留」や、一度電話を切って後でかけ直す「折り返し連絡」は、電話対応において頻繁に発生します。これらの対応をスムーズに行うかどうかが、お客様の印象を大きく左右します。

まず保留にする場合です。必ず「〇〇の件を確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか」と、保留にする理由と許可を得る言葉を伝えましょう。そして、保留時間はできるだけ短く、長くても1分程度を目安にします。もし1分以上かかりそうな場合は、一度保留を解除し、「申し訳ございません、もう少々お時間がかかりそうです。このままお待ちいただけますでしょうか、それとも後ほどこちらから折り返しご連絡いたしましょうか」と、お客様の意向を確認することが親切です。保留中の音楽(保留音)も、不快感を与えないようなものを選びたいものです。保留が明けたら、「大変お待たせいたしました」の一言を忘れないようにしましょう。

次に折り返し連絡の場合です。「確認の上、こちらから折り返しご連絡いたします」と伝える際には、必ず「いつまでに」「誰から」連絡するのかを明確に伝えることが重要です。「本日の〇時頃までに、担当の〇〇からご連絡いたします」といった具体的な約束をすることで、お客様は安心して待つことができます。そして、約束した時間は必ず守るように最大限努力します。もし、約束の時間までに連絡ができない場合は、事前に一度連絡を入れ、遅れる旨とお詫び、そして改めて連絡する時間を伝える必要があります。約束を破ることは、信頼を著しく損なう行為です。

たとえば、「すぐに折り返します」と言ったきり、数時間も連絡がない、あるいは忘れられてしまうといった経験は、誰にとっても不快なものです。不動産会社への問い合わせでこのような対応をされると、「この会社は大丈夫だろうか」と不安になります。折り返し連絡をする際には、お客様から伺った用件、名前、連絡先、そしていつまでに連絡するかを正確にメモし、確実に実行する体制が必要です。担当者が不在の場合でも、他のスタッフが代理で一次連絡を入れるなどのフォロー体制があると、さらに顧客満足度は高まります。保留や折り返し連絡は、お客様の時間をいただいているという意識を持ち、誠実かつ迅速に対応することが求められます。

これらの問い合わせ対応を的確に行うことで、お客様の信頼を得ることができますが、時には厳しいクレームの電話を受けることもあります。次に、そうしたクレーム対応について解説します。

クレームをチャンスに変える 上級電話対応

お客様の不満を受け止め、共感を示す姿勢

クレームの電話を受けた際、最も重要なのは、まずお客様の話を最後まで、真摯に「聞く」ことです。お客様は、何らかの不満や怒り、不安を抱えて電話をしてきています。途中で話を遮ったり、言い訳をしたり、反論したりするのは絶対にNGです。まずは、「はい」「ええ」と相槌を打ちながら、お客様が何に困り、何に対して怒っているのか、その感情も含めてしっかりと受け止めます(傾聴)。

そして、お客様の話を聞き終えたら、まずは不快な思いをさせてしまったことに対して、誠意をもって謝罪します。「この度は、ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません」「ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありませんでした」といった謝罪の言葉は、お客様の感情を和らげる第一歩です。ただし、事実確認ができていない段階で、全面的に非を認めるような謝罪は避けるべき場合もあります。「ご不便をおかけしている点について、お詫び申し上げます」のように、状況に応じた言葉を選ぶ必要があります。

次に重要なのが、「共感」を示すことです。「そのようなことがあったのですね、大変でしたね」「ご心配されるお気持ち、よく分かります」といった共感の言葉は、お客様に「自分の気持ちを理解してくれた」と感じさせ、冷静さを取り戻す助けとなります。ただし、安易な同情ではなく、お客様の立場や感情に寄り添う姿勢を示すことが大切です。

たとえば、入居者から「上の階の足音がうるさくて眠れない」というクレームが入ったとします。ここでいきなり「規則ですので仕方ありません」とか「直接注意してください」と言うのではなく、「毎晩騒音で眠れないとのこと、それは大変お辛い状況ですね。ご不便をおかけし申し訳ありません」と、まずは相手の苦痛に共感し、謝罪することが重要です。この最初の対応で、お客様は「話を聞いてもらえた」と感じ、その後の解決策の話し合いにも協力的な姿勢を示してくれる可能性が高まります。クレーム対応の第一歩は、テクニック以前に、相手の気持ちに寄り添う誠実な姿勢なのです。

迅速な解決策の提示と代替案の用意

お客様の不満を受け止め、共感を示した後は、具体的な問題解決に向けて迅速に行動することが求められます。クレームの内容を正確に把握し、事実確認を行った上で、可能な限り速やかに解決策を提示する必要があります。対応が遅れれば遅れるほど、お客様の不満は増大し、問題が深刻化する可能性があります。

解決策を提示する際には、具体的かつ現実的な内容でなければなりません。「できるだけ早く対応します」といった曖昧な表現ではなく、「本日中に業者に連絡し、明日午前中には状況を確認に伺えるよう手配いたします」のように、いつ、誰が、何をするのかを明確に伝えます。また、なぜそのような対応になるのか、その理由も丁寧に説明することで、お客様の納得感を得やすくなります。

しかし、すべてのクレームに対して、お客様が完全に満足する解決策をすぐに提示できるとは限りません。法的な制約、物理的な限界、費用的な問題など、様々な理由で要望通りに対応できない場合もあります。そのような場合には、正直に状況を説明し、可能な範囲での「代替案」を提示することが重要です。たとえば、希望通りの修理がすぐにはできない場合でも、「応急処置として〇〇を行うことは可能です」とか、「同様の機能を持つ別の設備を一時的に貸し出すことはできますが、いかがでしょうか」といった代替案を示すことで、問題解決に向けた誠意ある姿勢を示すことができます。

具体的事例を挙げると、入居者から「給湯器が壊れてお湯が出ない」という緊急性の高いクレームが入ったとします。すぐに修理業者を手配しようとしたものの、部品の取り寄せに数日かかると判明しました。この場合、ただ「修理は数日後になります」と伝えるだけでは、お客様の不満は募る一方です。そこで、「大変申し訳ありません、部品の都合で修理完了まで〇日ほどお時間をいただいてしまいます。つきましては、ご不便をおかけする間、近隣の銭湯をご利用いただけるチケットをご用意いたしますが、いかがでしょうか」といった代替案を提示します。完全な解決にはならなくても、お客様の不便を少しでも軽減しようとする姿勢を示すことが、信頼回復に繋がるのです。クレーム対応においては、完璧な解決策だけでなく、次善の策や代替案を用意しておく柔軟性も求められます。

電話対応スキルを継続的に改善する方法

クレーム対応を含め、電話対応スキルは一度学んだら終わりではありません。お客様のニーズや社会状況は変化しますし、自身の対応にも改善すべき点は常に出てきます。したがって、高いレベルの電話対応を維持・向上させるためには、継続的にスキルを改善していく意識と仕組みが不可欠です。

まず、自身の電話対応を客観的に振り返る機会を持つことが重要です。可能であれば、自分の通話を録音し、後で聞き返してみると、声のトーン、話すスピード、言葉遣い、説明の分かりやすさなど、改善点が見えてきます。また、対応がうまくいったケース、逆にお客様を怒らせてしまったケースなどを記録し、何が良かったのか、何が悪かったのかを分析することも有効です。

次に、社内で定期的に研修や勉強会を実施することも効果的です。外部講師を招いてマナー研修を行ったり、社内の経験豊富なスタッフが講師となってロールプレイングを行ったりすることで、新たな知識やスキルを習得し、対応の標準化を図ることができます。ロールプレイングでは、実際によくある問い合わせやクレーム事例を題材に、お客様役と担当者役に分かれて練習することで、実践的な対応力を養うことができます。

さらに、同僚や上司からのフィードバックを積極的に求める姿勢も大切です。他のスタッフの優れた対応を参考にしたり、自分の対応について客観的な意見をもらったりすることで、自分だけでは気づかなかった改善点を発見できます。社内で成功事例や失敗事例を共有し、互いに学び合う文化を作ることも、組織全体の電話対応スキル向上に繋がります。

補足すると、お客様アンケートなどを実施し、電話対応に関する満足度や意見を直接収集することも、改善のヒントを得る上で有効な手段です。「〇〇さんの説明が分かりやすかった」「電話が繋がりにくい」といった具体的なお客様の声は、改善すべき点を明確にしてくれます。このように、自己反省、研修、フィードバック、顧客の声の傾聴といったサイクルを回し続けることで、電話対応スキルは着実に向上していきます。現状維持は後退と同じです。常に上を目指し、学び続ける姿勢が、お客様に選ばれ続ける不動産会社であるための鍵となるでしょう。

まとめ

電話対応が会社の第一印象を決定づけ、顧客満足度やリピーター獲得、さらには口コミ評価にまで大きな影響を与える、極めて重要な業務であることを確認しました。声だけのコミュニケーションだからこそ、丁寧で的確な対応が求められます。次に、押さえておくべき基本マナーとして、迅速かつ丁寧な第一声、正確な情報伝達のための復唱確認、状況に応じた適切な言葉遣いと敬語の重要性を解説しました。これらは信頼関係を築くための土台となります。

さらに、内見予約や契約に繋げるためのテクニックとして、お客様の要望を正確にヒアリングする方法、物件確認から内見予約までのスムーズな流れの作り方、そしてプラスアルファの提案で顧客満足度を高める方法をご紹介しました。単なる受け答えに留まらず、お客様のニーズを先読みし、期待を超える価値を提供することが重要です。

また、日々寄せられる様々な問い合わせに的確に対応するためのスムーズ対応術として、よくある質問への準備、不明点や担当外の問い合わせへの誠実な対処法、保留や折り返し連絡をする際の注意点などを挙げました。迅速かつ正確な対応が、会社の信頼性を高めます。そして最後に、避けては通れないクレーム対応について、お客様の不満を受け止め共感を示す姿勢、迅速な解決策と代替案の提示、そしてスキルを継続的に改善していくことの重要性を強調しました。クレームはピンチであると同時に、誠実に対応すれば信頼回復のチャンスにもなり得ます。

不動産取引は、お客様にとって大きな決断を伴うライフイベントの一部です。その重要なプロセスにおいて、電話対応は、お客様との信頼関係を築き、安心して取引を進めていただくための生命線と言えるでしょう。今回ご紹介した内容を参考に、ぜひ日々の電話対応を見直し、一つひとつの応対品質を高めていってください。それが、お客様に選ばれ、長く愛される不動産会社への道筋となるはずです。

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